『織田作之助と蛍 奥本大三郎随想集』 (教育評論社) 発刊

織田作之助と蛍  奥本館長が虫と文学などについて綴った随想集。
 「牧野信一と昆虫採集」「モモンガの気持ち」「AIと贋作」などを収録。
 『アステイオン』などに掲載されたものに加筆し書籍化されました。


  ※ファーブル昆虫館でもご購入できます(定価1,800円+税)

館長の部屋(ブログ) 2019

7月18日 ~ クマゼミ ~
クマゼミ  今週は、どうしたことか、関西に行く用事が二件。
 大阪と京都。行ってすぐ帰って、また行く。
 その度に、新幹線の2時間半を我慢する。
 つい最近まで自分が大阪の大学に、毎週通っていたなんて信じられない。
 大阪行きのほうはもう済んだ。
 市内の真ん中の川の傍で、昼間に、クマゼミがシャー、シャー鳴いていた。気温、摂氏三十度。
 ところが、帰り、東京に近づくにつれて天気が悪くなり、着いたら小雨だった。気温二十二度。
 電車の中で、優先席に座ってゲームに夢中の女子高校生と、おじいさんが喧嘩をしていた。
 おじいさんは、喧嘩慣れしている女子高校生にはかなわないようだった。嫌な光景。
7月7日 ~ タガメ ~
タガメ  タガメが昆虫館にやってきた。
 ボランティアの大橋さんのお家で孵ったもの。
 今日、持ってきてくださったのが、すぐにお嫁に、そして婿に行ってしまった。
 たくさん孵化したそうだが、生き物を飼うのが上手な人がいるものだ。
 生き物に対するセンスがあって、まめに世話しないとこうはいかない。
 それにタガメのような肉食性昆虫ともなると、餌代がバカにならないだろう。
 まだ、コオイムシぐらいの大きさ。
 大きな成虫のタガメになるまでは、前途遼遠である。
6月22日 ~ 深夜の放送局 ~
モンシロチョウ  毎月、第3火曜日は、11時過ぎからNHKの「ラジオ深夜便」に出演することになっている。
 これが、スマホにNHKから電話がかかってきて、直接話すという方式なのだが、
 (その方が、録音より臨場感があるとかで)
 我が家の雑音がはいるし、第一、自分が何を言い出すかわからないし、ラジオでそのまま放送されるのはなんとなく不安で、スタジオで収録する方式にしてくれ、とかねがね頼んでいた。
 6月18日はようやくその願いが叶って、深夜のスタジオ入り。ラジオは13階で、なんだか縁起が悪い。
 部屋に入って、さあ、録音、という時に、カタカタという音。
 「なんでしょうねえ?」と聞いたら「風でしょう」という。
 そこへ職員が入ってきて「地震です。新潟で震度6強」 もはや、「虫愛づるムッシュー」どころではない。
 でも、せっかくきたのだから、録音だけは、と、工藤アナウンサー相手にモンシロチョウの話をしてタクシーで帰ることに。
 12時過ぎの放送局の中はだれもいず、ガランとして迷路のよう。こんなところ、一人ではとても出口までたどり着けない。
 一説によると、クーデタがあった時に、武装した反乱兵が中枢部にたどり着けないようにと、通路を複雑にしてあるという--まさか。
 ラジオ・テレビの発達で、増築を重ねているうちにこうなったのだろうが、帰りは、なんだかオバケが出そうだった。
 廊下にいっぱい貼ってあるテレビドラマのポスターが、人の顔ばっかりなのもいけない。
6月1日 ~ 初夏の再発見 ~
モンシロチョウ  春先、3月の初め頃、街中で見つけて嬉しいのはモンシロチョウである。
 その頃はどこででも、紙くずのように飛んでいるのが見られるけれど、そのうちぱったり姿が消えてしまう。
 それから今度は5月の半ばになって、またちらほら姿を見かけるようになる。
 今日6月の1日、動坂のバス停で5分ほどのあいだに2頭を見かけた。
 こんなに、大根も、キャベツの畑もないところで、アブラナ科の雑草を食べているのだろうか。
 餌がよく足りるものだと思う。丈夫な蝶である。
 一度、昆虫館のギョボクの周りを飛んでいるのを見たことがある。
 ギョホクはツマベニチョウの食草だが、たまにモンシロチョウも食べるらしい。


3月23日 ~ メーリアンのイモムシ変態図集 ~
昆虫変態図譜  栃木にマリア・シビラ・メーリアンの有名な図集の古い版本を持っている方がおられる。
 メーリアンは、3百年も前に、オランダに住んでいた女性で、幼い娘と二人、勇敢にも南米のオランダ領スリナムに渡り、現地の昆虫や、爬虫類、両生類の精密な絵を描いた。
 虫は、それぞれの生きたものが、植物に止まらせてあって、その描写に生き生きとした実感がある。
 それもそのはず、彼女は、黒人奴隷が森の中から取ってきた幼虫を飼育して写生し、記録をつけているのだ。
 何しろ、当時、西洋人は、蝶の蛹が羽化してくることをキリストの受難と解放に例えたりしていた時代である。
 普通の画家が描いた蛹の図には人の顔が描いてあったりした。メーリアンの視線は時代を超えているのである。
 原画は、羊皮紙に書かれた大きなもので、ロシアの国宝級の絵であるという。その古い版画を見せてもらった。
 いずれ、日本語版が出版されるらしい。こういうものが出版されるとは、日本は大した文化国家ではないか。
2月17日 ~ クワガタ飼育教室 ~
クワガタ飼育教室  外国産クワガタの輸入が許可された1999年から、飼育の工夫をしてこられた佐藤敬さんが講師である。
 我々にとっては昔からの仲間だ。
 ファーブルの「昆虫記」をよく読んでおられて、「自分の目で確かめたことしか言わない」ということをしっかり守っている。
 そういえば佐藤さん一家とは、一緒にファーブルの土地を訪ねて、南フランスにも行った。
 その時のお子さんが、大きくなって一緒に来られた。見上げるような大男になっていた。
 横で聞いていればすぐわかるように、実際に苦労した人独特のこだわり方の、熱血授業である。
 しかし、聞いている子供達の方もクワガタに詳しい。
 クワガタ幼虫と、カブトムシ幼虫の違いは?と聞くと、「毛!」とすぐ答えが返ってくる。
 卵から孵った幼虫が、土の中に潜って行くときにこの毛が役に立つのである。
 1時半から4時近くまで、文字通り、熱い授業だった。
1月12日 ~ ランボー再読 ~
アルチュール・ランボー(Wikipedia)  この頃はもっぱらランボーを読んでいる。
 アルチュール・ランボーは、フランス19世紀の詩人。
 パリの詩壇に彗星のように現れ、数々の驚くべき作品で、眩しい光芒を放ったが、
 二十歳前後で突然、詩を捨てて世界を放浪し、アビシニアの武器商人となって砂漠に姿を消した。
 そして、三十半ばで、マルセイユの病院で片足を切断されて死んだ、まさに天才詩人として知られている。
 あのアクション映画のランボーとは別人である。
 フランスの詩人の方は、Rimbaudと書く。
 そしてシルヴェスター・スタローンが演じた方は、Ramboと言う綴りである。
 ランボーの詩を翻訳し、その生涯を語るために、今私は一生懸命だが、これが、しんどいけれどやりがいがある。
 集英社の季刊誌「kotoba」に連載することになっていて、第一回目を書き終えたところ。
 乞うご期待。
 (写真はWikipediaより)


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