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特定非営利活動法人 日本アンリ・ファーブル会 ~ 虫の詩人の館 ~
『奥本昆虫記』 (教育評論社) 発刊
奥本館長の新著がでました!
月刊誌「潮」に連載されたコラム「山野蝶瞰」の集大成版です。
テントウムシにカブトムシ、アメンボから人面カメムシ、軍隊アリ、バイオリンムシなど、100編の虫エッセイ。
「蜜は甘い。だが蜂は刺す。薔薇に棘があるように、蜜蜂には剣がある。この世に苦痛を伴わぬ甘美さはない。
人間はつくづくあつかましい動物であって、たとえば「蜜蜂」、とこの蜂に名付けたとき、その蜂はもう、自分のものだと思い込んでいる。
「働き蜂」は人間のために働いていると考えているふしがある。・・・」(本文「蜜蜂」より)
各エピソードに、やましたこうへいさんのたのしいイラストが挿し込まれています。
※ファーブル昆虫館でもご購入できます(1,800円+税)
館長の部屋(ブログ) 2015
- 12月5日 ~ スカラベ句会 ~
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この句会も3か月おきだが、これで3年ほどになる。
西村和子さんのNHKの番組に引っ張り出されたのがきっかけ。
句会も楽しいが、そのあとみんなで飲むのが楽しみである。
本日のお題は「ファーブル忌」。
名作ぞろいで、挙げきれないが、次のような句が詠まれた。ちょっと紹介。
「ねむいねむい蟻歩いてるファーブル忌」 俊子
「口髭の昆虫少年ファーブル忌」 梢
「志賀昆虫ここにありけりファーブル忌」 睦郎 (※渋谷の宮益坂にあった)
「少年のそびら蟲めくファーブル忌」 俊一 (※”そびら”は背平(そひら)で背中のこと、高得点句)
「紅葉散るファーブル通りの石畳」 梢 (※南仏アヴィニョンの街に”ファーブル通り”は本当にある)
「虫のゐる涅槃図ゆかしファーブル忌」 田代
「黒麺麭(くろパン)の堅きを炙るファーブル忌」 完
「日当りのフランスパンやファーブル忌」 恵美子 (※こういうつかず離れずの句がいいんだ、と高橋睦郎先生)
「転がせば止める者をりファーブル忌」 のり子
「フェルト帽目深に被るファーブル忌」 恵美子
「虫の音も幽かになりぬファーブル忌」 田代
「大三郎五欲を控ふファーブル忌」 完
五欲とは何と何か。とにかくこのあとたっぷり飲み食いしたのであった。
- 11月29日 ~ セミ博士 ~
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十一月下旬、練馬区の「ふるさと博物館」で開かれている加藤正世の展覧会に行ってきた。
練馬は遠いし、博物館も駅から離れているので、出かけるのがおっくうで、あやうく見逃すところだった。
しかし、行ってよかった、とつくづく思った。加藤博士のことは子供の頃からその著書を読み、セミに関する世界一流の業績など、
少しは知っているつもりであったが、やはり、ご本人の”手沢を蔵した”というか、手に触れた品を見るとその性格、お人柄までがこちらに伝わるような気がする。
標本、展示品の随所に、几帳面で器用な加藤正世という人物が現れているのである。
今でいうジオラマのような、獲物を捕らえる肉食昆虫の生態が標本箱の中に再現されているところなどは、思いつきと創意工夫の面白さがあって、
昭和の初年から戦後にかけての、よろずに質素な時代にあって、昆虫を存分に楽しみ、子供たちの啓蒙に励んだひとりの秀でた博物学者の姿が浮き彫りになっている。
大野正男先生や矢後勝也氏による図録がまた素晴らしく、これこそ保存版である、と思った。
(編集部註) 写真は子供たちが作ったクリスマスツリー用のセミのオーナメントです
- 11月21日 ~ サンタクワース ~
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バラバラになったり、虫に食われたりした標本のカケラ、捨てるのも惜しいので、山下さんがクリスマスツリーの飾りにした。
アトラスカブトやクワガタたちのサンタです。
(編集部註)
12月13日に恒例のファーブル昆虫塾クリスマス会を開催します。
未入会の方も当日までに入会していただければ参加可能です。(ファーブル会と昆虫塾の年会費が必要です)
虫ツリーに標本を利用したオーナメント「サンタクワース」やそれぞれの願いを書いた飾りをみんなで着けます。
ビンゴ大会や標本など昆虫グッズの即売会(投げ売り?)もあります。
おいしいお料理も用意してお待ちしています。 詳しくは昆虫塾のページをご覧ください。 - 11月10日 ~ 晩秋のカラス ~
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夏に飼育して蛹になっていたカラスアゲハが、書斎の吹き流しの中にころがしておいたら今頃羽化した。
飼育のやり方がいい加減だったからか小さい。
色もあまり綺麗ではない雄であった。
これと同じカラスアゲハの兄弟で、夏のうちにすぐ成虫になったものは羽化不全だった。
餌のカラスザンショウがしおれないよう、飼育ケースをサランラップで包んだので、湿度が高すぎたのがひとつの原因かもしれない。
ところで先日、大阪の友人が柿を送ってきてくれた。
千駄木小学校の柿の大木は、去年大豊作だったが、今年はまったくだめである。
去年、これ以上伸びないように強く剪定しすぎたかららしい。
とはいえ、近所のカラスが食う分くらいはなっているだろう。 - 10月31日 ~ ハンミョウの合戦 ~
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昆虫館に着くとまず、ハンミョウの大水槽の電灯をつける。
パッと明るくなると、それまで真暗闇の中にいた十数匹のハンミョウたちが
その場に凝固したようにじっとしている。
砂の上に小さな影が見えて何となく前のめりに虫が止まっている様子は、
「だるまさんがころんだ」の遊びをしているようである。
それがずーっと灯りをつけておくと、やがて自由に飛び回るようになる。
週に一回、近藤さんがワラジムシをやってくれるのが彼らの食事で、
私は水しかやらないから、「先生、水腹で・・・」と空腹を訴えられているような気がする。
そのせいで、砂の上には共食いの犠牲者の部品が散らばっている。
それが何とも彩り美しく、壇ノ浦の戦いで平家の若武者が身にまとっていた鎧の破片のようである。
(左の写真はハンミョウがケンカをしているところ) - 10月25日 ~ 見ちがえるよう ~
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最近、ファーブル昆虫館に新しいボランティアの方が来てくださった。
二階に保管している大量の標本のパラゾールを入れ替えてくださる。
いちいちドイツ箱を開けて防虫剤を入れ替えるのは大変な作業だが、お一人で粛々と作業してくださるのは非常にありがたい。
伊藤さんという方である。この方はまた、物を片付ける名人で、二階の元・生き虫飼育室も標本室も片付いた。
三階のワークスペースは、まず床が見え始め、空の段ボール箱が折りたたまれ、わけの分からぬ書類・雑誌が整理整頓されていって、とうとうすっかり本来の事務室らしくなってしまった。びっくり。
聞けば前のお仕事の関係で三年に一回、転勤があったのだという。納得である。
それにしても本当に気持ちがいい。感謝々々。
- 9月13日 ~ 東京からなくなったもの ~
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昆虫館の手前、保健所の近所に更地ができた。
前は何が建っていたかもう思い出せないが、たちまち草が茂って、秋の虫が鳴いている。
ツヅレサセコオロギにエンマコオロギの声まで聞こえる。
こういう空き地は、東京では実に貴重である。
以前に「東京人」という雑誌のアンケートで、「東京からなくなったものは」というのがあった。
解答に、風呂屋とか喫茶店とかいうのが多かったが、今思えば、東京からなくなったものは、何よりも土管の転がっているような空き地である。
昔は、夕方、そういう空き地にギンヤンマがいたものである。
そういう風景はもうない。
- 9月6日 ~ ハンミョウの知られざる生態 ~
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ファーブル会のスタッフたちが房総へ遠征し、ハンミョウを採集してきた。
かなりの大漁だったようで、15頭ほど昆虫館で生き虫として展示した。
日頃の行いのいい人にはいいことがあるのだ。
ハンミョウは甲虫のくせによく飛ぶ。ハエかと思うくらい。
風呂桶ほどもある大水槽に投入すると、自由に、わんわん、といった感じで飛びまわっている。
じっと止まっているときは、それこそ宝石のように綺麗な虫だが、動いていると目立たない。
来館中の子供たちも見入っていた。
閉館時間近くになってもう一度水槽の様子を見に行くと、ハンミョウたちの姿が見えない。
近藤さんが「先生、上です」と言うので、水槽を覆っているネットの裏側を覗くと、なんと、そこに群れを作っているではないか。
肉食昆虫同士がこんなに群れて、モメごとは起きないのか。
蛍光灯の照明の下に集まっているのだが、不思議な事に2本あるもう一方の下にはまったくいない。
こんなことは自然の中で観察するのはほとんど不可能であろう。
こうして大きな水槽に入れてみてはじめてわかる生態なのであるが、それにしても虫というものは分からないことばかりである。
- 9月2日 ~ 脱獄者 ~
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昆虫館の三階でひとり原稿を書いていると、バリバリという音がする。
前回紹介したクワガタたちが大アゴでプラスチックの飼育ケースを根気よく噛んでいるのだ。
日本産のクワガタも同じことをするけれど、何しろオウゴンオニなんかは体が大きくて力が強い。
今にも飼育ケースを壊してしまうのではないかというような、すさまじい音をたてている。
ところで今流行っているゲームに”プリズンブレイカー”というキャラが登場するらしくて、 英語を知らない小学生がしきりにその名を口にする。 このクワガタたちはまさに脱獄者の大男みたいである。迫力満点。
さらにコーカサスオオカブトなどは怪力の巨人で、いつケースが壊されるか知れたものではない。
それによく食べる。一日に昆虫ゼリーの大を一個完食。感心する。
(写真は先日Kさん宅で脱獄を図ったダイオウヒラタクワガタ)
- 8月30日 ~ 臨時生き虫展示 ~
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スカリツリーの大昆虫展が無事25日で終了。
展示していた生き虫をひきとってくれないかとのことで運搬してきた。
ヘラクレスオオカブト、オオクワガタ、タランドゥスオオツヤクワガタなど、
内外のスター連中が総勢17頭来館。
臨時の生き虫展としてファーブル館で展示・公開することにした。
ところがその中に大変めずらしいカブトムシの雌雄(♂♀)型が混じっていた。
どうやら哀川翔さんの所有物が手違いで紛れ込んでいたらしい。
そのまま黙っていただきたいところだが、正直に申告して返却。
せっかくなので写真だけここに掲載させていただくことにする。
- 8月16日 ~ 大昆虫展 ~
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スカリツリーの昆虫展でカブトムシゆかりさんといわゆるトークショー。
ゆかりさんが「カブトムシゆかりの昆虫教室」と題した要領のいいパワーポイントを作ってきていて、
小学生低学年ぐらいの子供たちにクイズをだす。
正解した子には自分で用意してきた昆虫のフィギュアを手渡し、
古代のトンボ「メガネウラ」の解説には自筆の絵を広げて見せた。
相当に場数を踏んでいるのでしょう、見事な司会進行ぶりに感心するばかり。
子供たちへのサービス精神も旺盛で、会場を盛り上がらせる腕は大したものだった。
私の方は、相槌を打って笑っているだけで、ラクチンでした。
- 8月15日 ~ 昆虫飼育教室 ~
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今日は標本教室ではなく、甲虫の飼育(ブリード)教室を開催した。講師は高橋冠さん。
冠さん、20年のウンチクに、子供たちも聞き入る。ニジイロクワガタの幼虫がお土産。
それにしてもこの二十年ほどの間に甲虫飼育技術は大躍進を遂げた。
昔は林長閑氏の『甲虫の生活』ぐらいしか参考図書がなく、みんなミキサーでクヌギの木を砕いてネスカフェのビンに詰め、それをクワガタの幼虫の飼育容器にしたりしていたのだった。
標本作りも楽しいが、飼育にはまた別の楽しみがある。
なにしろ生きたクワガタで、毎日大きくなったり変態したりするから、名前をつけて成長ぶりに一喜一憂することになる。
ふつう標本に名前をつけることはないので、このあたりがちがうのである。 - 8月12日 ~ 標本教室 ~
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昨日に引き続き、今日も昆虫標本製作教室。
昨日はセミ・トンボだったが、今日はセミ・トンボ教室と、中級教室も開いた。
こちらは、甲虫の翅を開いたり、けっこう凝ったことをやっている。満員の盛況。
その材料が、スマトラ産の、青い地に黒い横縞の大型カミキリだとか、
やはりスマトラ産のホソアカクワガタだとか、昔から考えればずいぶん豪華美麗種を使っている。
亡くなった国立科学博物館の黒澤良彦先生らが見られたら、びっくりされるだろう。私も「子供にこんな贅沢なものを与えていいのか」とつい、ためらう次第。
しかし、そのうちに世界中で採集禁止地区が広まっていったら、こんなこともできなくなるだろう。
今のうち、今のうち。 - 7月25日 ~ 甲本ヒロトさん来館 ~
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浜松産のカワラハンミョウ4頭を持参して下さる。
ナミハンミョウのように派手ではないが、華奢で鞘翅の柄が通好み。
甲本さんは久しぶりに岡山の実家に帰られたとかで、名物の柚子せんべいと倉敷の
「W焙煎はじけ黒豆茶」を土産に下さる。
柚子せんべいをぼりぼり食べていると、その音がうるさくて人の話がよく聴き取れない。
「歯が丈夫ですね」
と甲本さんにほめられた。
(いただいたカワラハンミョウはしばらく昆虫館で生態展示していますので、ぜひご来館ください)
- 7月21日 ~ オオクワガタを獲る ~
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「あっ、あれ」と近藤さんが指さした。
農道脇の二股になったクヌギの木の高いところに小さな”うろ”がある。
私の位置からでも、そのうろの中に黒い光が見える。コクワガタやヒラタクワガタではない。
「ひょっとすると!」
と言いかけたら、R君が、
「僕、登ってみる」
と、二股の幹の間に足をつっぱって登り始めたが、うろまでは3メートルはある。二本の幹はどんどん広がっていくので開いた足が届かなくなった。
仕方がないのでうろのある方の幹に抱き付いてよじ登ったが、うろまでもう一息というところで力が尽きかけそうになった。
するとそれを見ていた安達さんが黙って木の下に立ち、R君の尻を手で押し、肩に足を乗せさせてなんとか態勢を立て直すことができた。
R君は中学三年生、この一年で6センチも背が伸びてもう一人前の大人の体格だ。
Tシャツ一枚で、トレッキングシューズで踏みつけられたのではさぞ痛かったろう、おまけに尻を支えていた手も踏まれてさすがに安達さんも顔をしかめた。
それでも数分間の苦闘の末、とうとうピンセットの先に獲物をとらえた。立派なオオクワガタの♀だ。
♂は中にもぐり込んだらしいが、それはうろの縁を削らなければならないし、片手で樹につかまっているR君の腕力の限界がきてしまったのであきらめる。
初めてのオオクワガタにR君は有頂天だったが、安達さんの優しさがわかったかな?
- 7月18日 ~ カブちゃんカブト ~
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東京スカイツリータウンで今日から開催中の「大昆虫展」。
そのオープニングイベントに出演された、カブトムシゆかりさんが手塩にかけたカブト虫を6ペア提供して下さった。
昆虫館のカブト虫がとうとうゼロ匹になったことを知って、急きょ救済してくれたのである。
展示をはじめたとたん、来館中の子供たちが群がり歓声を上げて大好評。
いよいよ夏休みの季節到来である。
ところで、ゆかりさんのカブト虫はボクもほしい。
- 7月16日 ~ 100×100は? ~
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当会としてははじめての著作、『虫屋さんの百人一種』の見本到着。
主に当会のメンバーの方々に、それぞれ好きな昆虫を一種選んでもらってエッセイを書いてもらったもの。小学生から大ベテランの虫屋まで、著者の多様性は高い。
やくみつるさんとカブトムシゆかりさんにも寄稿していただいた。
昨年発刊する予定であったのだが、諸事情で今年になってしまったが、夏休みに間に合ってよかった。
執筆者が100人いて、仮に一人が百冊売ってくれれば、一万部捌ける計算だが、なかなかそうはいかない。
- 7月12日 ~ 家族で昆虫採集 ~
- 穴山採集会に家族で参加。うちの子供の同級生で有望な昆虫少年も同行。
往きの高速道路は故障車と事故で三か所の大渋滞。到着まで3時間以上かかる。
天気はまあよかったが、オオムラサキは少ない。台場クヌギが巨大に育ち、そのはるか上の方に蝶の姿は見えるが、わずかな樹液には降りてこない。
子供ではなかなか手が届かない。
雑虫を採る。小型のムシヒキアブがウスバカゲロウの体液を吸っていた。標本にする。
クヌギのウロの中にコカブトムシのばらばらになった死体発見。
コカブトムシは何とはなしに懐かしい。
- 6月21日 ~ ゲイシャ ~
- 『奥本昆虫記』の見本出来る。
小生の虫エッセイに、見開きで挿絵をつけて下さった山下さんのアイディアにはいつも感心する。
たとえばクジャクチョウの日本亜種の学名「ゲイシャ」の話。クジャクチョウの身体が日本髪の芸者になっている挿絵を描いてくれた。
これがカラーだったらもっといいが本が高くなる。 - 6月12日 ~ 虫屋スカウティング ~
- 子供を連れて国立科学博物館の「大アマゾン展」に行く。子供の小学校の同級生も三人。
ケモノ、爬虫類、鳥、魚、そして昆虫・・・さまざまな生物の映像と標本を上手に使った見ごたえのある展覧会で子供たちも喜んだ。
昆虫の標本は亡くなった池袋の荒井久保さんのところから寄贈されたものだという。荒井さんの標本もいいところに納まって安心というところ。
同級生の男の子たちもファーブル昆虫館に来たいと言ってくれている。
虫屋のタマゴは数少ないながらも身近にいるもので、その芽を摘まないように立派なナチュラリスト、できれば虫屋に育ってほしいと願ってやまない。
ところでこういう施設もしかし、独立行政法人化-古い話だが-のおかげで予算的には苦しいはず。大英博物館などもサッチャー政権の時期に大ナタをふるわれたらしいが、それでもかつての大英帝国の遺産があるから、天井は高く、柱は太く、実に立派である。
結局、教養がなくてバブルマネーの正しい使い道に気が付かなった我々はあれに追いつくことはもはや望めないのか。
科博も、つくづく見てあちらの博物館と比べてみれば、ハッキリ言って大人と子供。中学生のコレクションぐらいの気がして口惜しい。 - 6月6日 ~ ファーブル会総会 ~
- 日本アンリ・ファーブル会の総会が無事終了。
総会となると特別な方々が来てくださる。大野正男、藤岡知夫、鶴見尚弘、増田陽一の各先生方。鶴見先生は八十路を越えておられるはずだが、相変わらず酒はお強く「もう一軒行こう!」は変わらなかった。
東洋史の泰斗であるから、久しぶりにお会いした小生としては、今の中国に起きている事件などに関して、いろいろお尋ねする。
そして、「なるほど中国人の思考方法だとそうなるのか!」と思うことばかり。
大野先生はいつもお土産に珍しい文献のコピーなどを下さるのだが、今回は戦前の日本の科学雑誌に出たウージェーヌ、ル・ムールトの紹介記事。
ル・ムールトは、拙著『補虫網の円光』の主人公になったフランスの標本商である。
帰りには、藤島武二の、若い女性のまわりに蝶が群れ飛ぶ切手の原画と切手の比較のカラーコピーまで下さった。
藤島の水彩画「蝶供養」には、円山応挙の蝶の写生帖の影響があるとのお説。なるほど応挙と藤島は四条派つながりなのだ。 - 5月27日 ~ 発刊祝い ~
- 『ファーブル昆虫記』九巻下が無事出たので、口絵の撮影者である、海野さん、鈴木さん、伊地知さんでお祝い。
市ヶ谷の海野さん行きつけのフレンチ「マルミット」というお店。
もう一度フランスに取材に行く話。海野さんの西アフリカでの体験。その話は、彼のブログに詳しい。
- 5月26日 ~ ぬえチョウ ~
- 昼ごろ昆虫館に着いたら、大きな白い蝶が。アカボシゴマダラの♀だった。エノキに産卵に来たらしい。
ちょっと前なら、「何だろう?」とぎょっとするところ。
アゲハのようにも見えるし、オオゴマダラのようにも見える。まさに、鵺(ぬえ)蝶である。
- 5月6日 ~ ファーブル館のレモン ~
- 昆虫館の裏口にレモンがある。
三年ほど前、夜店で売っていた鉢植えのレモンの木がだんだん弱ってきたのを地植えにしたら力を回復したとみえて、去年大きな実を一個だけ付けたのがまだ生っている。
今年はつぼみをたくさんつけて、咲き始めている。
もうじきいい匂いがしそう。
この昆虫館ができる前、庭に大きなレモンの木があった。都の浄水場を見学した時もらった肥料をやったら、三百個以上も実を付けたことがある。
トタン屋根に落ちたら穴が開くと言って、近所の人に叱られたぐらい、大きな実であった。
もちろん、本来はアゲハの餌である。それが大きくなりすぎて、枝葉を伐ろうにも、高枝鋏がないと手が届かないぐらいになっていた。
昆虫館を建てるに際して、他の食草、食樹と共に伐らざるを得なかった。
庭が欲しいが、固定資産税はこれ以上払いたくない。
- 5月1日 ~ 不忍通りの草刈り ~
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いつものとおり、昆虫館の帰りにわざとバスを一停留所乗り越して池之端一丁目で降りる。
予想が当たってしまい、草地がきれいに刈り取られ、辺りはカラカラに乾いていたが、なぜかリュウノヒゲはびっしりと植えられている。
キク科の雑草にベニシジミくらいは来ると思っていたのだが、残念である。
がっかりして池に面したベンチに座る。足元にスズメがちょんちょんと寄ってくる。
「何もくれないんですか?」
「うん、役所の人に叱られるからね」
「じゃあ草の種でガマンします。でもお米が食べたいなあ」
「舌を切られるよ」と言ったら、あわてて飛び去った。
- 4月29日 ~ まるごと高知 ~
- 銀座一丁目の高知県アンテナショップの二階にある「おきゃく」という名の土佐料理の店で昆虫館のボランティアスタッフと会食。
皿鉢料理に大杯で日本酒の回し飲み、カツオのタタキにウツボのタタキ、オカメとヒョットコとテングの面を象った可盃(べくはい)遊びもして高知式を一通り堪能した。
ゲストにカブトムシゆかりさんにお越しいただき、話もはずみ酒も進み、気が付けば閉店時間間際だった。
- 4月28日 ~ ボンドガールに遭う ~
- 文化放送の浜美枝さんの番組に呼んでもらう。二週分収録。
往年のボンドガールはあいかわらず綺麗だった。いわゆる小顔で、プロポーション抜群で。
お会いするのはこれで三度目だが、自分が大学生の時、この女優さんと直接話をする機会があろうとは夢にも思わなかった。 - 4月23日 ~ 京大総長のシルヴァー・バック ~
- 代官山の蔦屋書店イヴェント。山際寿一先生の『サル化する社会』と小生の『虫から始まる文明論』の宣伝対談。
山際さんはさすがに魅力のある方で、ゴリラやチンパンジーなど類人猿の話はもちろんのこと、ほかで聞けない話も色々聞くことができた。
観察地点の高地から少し低地に降りてくるとゴライアスオオツノハナムグリなどのめずらしい昆虫もいるのだそうだ。
ダニの大群には大変難儀をされるそうだが、悠然と滑空していくザルモクシスアゲハは言葉をなくすほどうっとりするとおっしゃっていた。
しかし、こういう方の貴重な時間がこれから京大総長として出席する会議のために失われることになるのは、なんだかもったいない気がするが、
そういいながら自分はこの対談前にたっぷり2時間も先生と喋ってその時間を浪費したのだった。 - 4月19日 ~ 池之端事情 ~
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都バスに乗って、千駄木から不忍通りを通り、池之端一丁目で降りると、交番の横あたりに、草がいっぱい生えている。
日当りがいいのだろう。今はカラスノエンドウとか、赤い外来種のヒナゲシに似てはいるがやや貧乏くさい”ヒナゲシモドキ”とでも名付けたいようなケシの花が咲いている。
田舎だったら、ヨモギ摘みに来る人もいるかもしれない。ちょうどクスの若葉が伸びる頃で、落ちたばかりの枯葉が散らばっている。
雑草とはいえ、こうして茂っているのはいい景色だと私などは思うけれど、どうせもうすぐ刈られてしまうことになる。あのモーターで回転する草刈機が普及してから、ほんとうにきれいに草が刈られるようになった。
私としては一つ手前の池之端二丁目で降りたほうが家が近いのだが、この草はらが楽しみで、ひとつ乗り越すことにしている。先週までは八重の「関山」という桜が満開で、皆、スマホで写真を撮っていた。 カモメがもの欲しそうに杭に止まっているが、これにも餌をやってはいけないことになっている。
自然を乱してはいけない、ということなのだが、その割に工事はよくする。不忍池のこのあたりも、すっかり護岸工事がほどこされて、トンボは少なくなったし、春先のオタマジャクシも見られなくなってしまった。
- 4月11日 ~ トリバネアゲハ ~
- 夏の展示会のために、昆虫館2階の収蔵庫の標本を整理し、簡単な説明と産地の地図を付ける作業をしなければならない。
トリバネアゲハ、キシタアゲハから始めたが、我ながらずいぶん蒐めたものとあきれるような気持になる。今はもう入手しがたい標本がたくさんある。
梅田さんと二人、何時間も奮闘するがあんまり進まない。
カビの生えた蝶の触角をどうしよう?とれかけた尾状突起をどうしよう?
- 4月10日 ~ D坂殺木事件 ~
- 2週間前ほど前、ひとりで昆虫館にいると、”ヴーン”と、マナーモードのケータイが鳴るような音。
「ン?」と思って机の上を見たが、ケータイの音ではない。
窓の外を見ると、巨大な重機のバケットに人が乗っている。ヘルメットを被ってチェーンソーを持っているではないか。イチョウの大木を伐っているのだ。
ロープをかけて手際よ輪切りにしていく。秋になって黄金色に輝く姿が神々しかったが、まわりの人は皆、落ち葉の掃除が嫌いらしい。
伐るのは簡単だが、育つのは五十年も百年もかかる。
- 3月8日 ~ 誕生会 ~
- 3時からファーブル昆虫館で小生(奥本)の誕生会。今回で71回目の啓蟄を迎えた。せいぜいいたわってもらいたい。昆虫館も10年目に入る。めでたし。
小檜山先生が昆虫超拡大写真の中身(コンテンツ)を更新してくださる。この機械を「拡大君(カクダイクン)」とでも名付けるか。もっといい名前はないものか? - 3月7日 ~ スカラベ句会 ~
- この会もこれで3年以上続いている。俳句は少しもうまくならず。句会のあと飲むだけが楽しみなり。今日も全員で、動坂交差点の動坂食堂に行く。句会のメンバーは、皆、よく食べてよく飲む。
二次会は団子坂の「アンバー」へ。石榴のカクテルを飲む。 - 1月25日 ~ 虫から始まる文明論 ~
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朝、日経新聞を開くと、文化面の福岡伸一さんの連載「芸術と科学のあいだ」が目についた。
「虫の模様に見る文化の起源」というタイトルである。カラーでアグリアスとゴライアスオオツノハナムグリが出ている。
その趣旨は、たとえばアフリカの虫にはアフリカの虫の色と模様があり、南米の虫には南米の・・・という話で、人間の文化もその起源をたどると、自分たちの暮らす風土に対する敬意=オマージュとして成立したということであった。
これは、私がこの数年来講演などで喋っていることと同じで、大いに意を強くした。
その本はこの三月頃に『虫から始まる文明論』という表題で出ることになっている。 - 1月24日 ~ 講演会の準備 ~
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昆虫館で、明日の講演会の打合せ。パワーポイントで映す虫や植物の写真を選ぶ。
昔ならスライドを並べ替えたりするだけで大変だった。地方の公民館などで話をする時は、スライドを持って行って、早めに会場に入り、セットするのに時間がかかった。
映し始めてもピントがなかなか合わなかったり、電灯の光が弱くてぼんやりとしか見えなかったり、窓の暗幕から光が洩れたりで、なかなかうまくはいかない。
ピントを合わせ、映写幕の大きさに調節するのに映写機の下に台を置いたりするのだが、照明の熱でスライドがペコンとふくらんだりしてピントが狂ってしまう。
指で画面に触ったところにカビが生えて、それがひどく目立つ、などということもあった。
今はメモリーカード一枚を持っていけばそれで済む。しかしそれでもたまにパソコンの機嫌が悪いとか、ケーブルが違うとかで、話が始まるまで半時間も、もたもたすることもある。
もう十年も前になるか、ある講演の際、係りの小学校の先生に、「スライド映写機、今もありますか」と訊ねたら、
「棄てました」
と、一言だった。 - 1月17日 ~ 箱の中身はなんだろな ~
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スタッフ5人で昆虫館3階の整理。
”展翅・展脚中”と書いた紙の貼ってある発泡スチロールの大きな箱。「何が入っているんだろう?」スッカリ忘れている。開けてみなければ分からない。
開けてみるとタニンバル産のコガネムシや大阪産のオオクワガタ(但し飼育品)が出てきた。
「このままにしておいたら虫がつく」と言いながら、針をはずし、ドイツ箱に移していると、案の定、標本の下に黒い粉が落ちている。コナムシの仕業である。
空き缶に標本を写し、酢酸エチルを浸みさせた綿を入れてセロテープで封をする。
やがてこの缶のこともまた、何が入っているか忘れることだろう。 - 1月4日 ~ なんとなく 新年会 ~
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ファーブル館にて新年最初の集まり。いつものとおり、梅田尚美さんが手料理を持ってきてくださった。
チキンロール(八幡巻き)、筑前煮、お煮しめ、鯛飯、ナマコ酢。これだけそろうと、お正月というよりは田舎の結婚式の雰囲気。
金屏風のかわりにモルフォチョウとタマムシの張り混ぜでも立てたいところだ。話題は、しかし、真面目に去年の反省と今年の抱負。
年の暮れになって慌ててファーブル会の会費納入のお願いをしたばかりだったが、さっそく大勢の方が送金してくださった。反省を込めて感激。
養老先生なぞは、いつまで払っていたか、ご自分で調べて三年分送ってくださったのであった。今年からはきちんと記録しよう、と誓い合う。
今年もファーブル会をよろしくお願いします。