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特定非営利活動法人 日本アンリ・ファーブル会 ~ 虫の詩人の館 ~
2017年5月26日に最終巻となる二十分冊目が発刊されました!
刊行開始から12年。博物学の不朽の名著、遂に個人完訳完結!
80歳を超えたファーブルが、幼年時代や高等中学校(リセ)当時の思い出をつづる、
全221章のなかでも指折りの感動的なエッセイも掲載。
※ファーブル昆虫館でもご購入できます(定価3,800円+税)
館長の部屋(ブログ) 2018
- 12月22日 ~ クリスマスの贈り物 ~
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先日のファーブル会のクリスマス子供会に、大阪の有名な「蓬莱」の”豚まん”と”ちまき”を大量に差し入れしてくれた方がいた。
こういう奇特な人はありがたい、ファーブル会にとって、なくてはならない存在である。
前日に昆虫館で荷物を受け取ったので、ひとつ試食させてもらった。館長の特権であろうか。
あまりたくさん食べたら「職権乱用」と言われるかもしれないが。
大阪では”肉まん”と言わずに、”豚まん”という。
”豚まん”と”肉まん”とはどう違うか。
難しいことは分からないけれど「蓬莱」は昔からある名店で、その頃から行列しなければ買えなかった。
「その頃」と私が言うのは、昭和の三十年代である。
蒸しパンの生地がしっかりしていて、肉の餡の味が深い、というと如何にも食通のようだが、
要するに子供のとき食べた、懐かしい、しかもエキゾチックな味のような気がした。
ラーメンも餃子もまだ異国風の食べ物であり、本格的な中華料理なぞはまだ誰も知らない時代の話である。
- 11月18日 ~ トンボ釣り ~
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11月17日、築地の朝日新聞社で、「WE LOVE トンボ」絵画コンクール受賞者への賞の贈呈式が開かれた。
かく言う小生が、文科省や環境省の人たちと共に賞状を渡す一人。
表彰されたのは、小学1年生から高校3年生まで。
応募総数約15万人という中から選ばれた人たちだから、とにかくみんな、絵は達者で上手いのだ。
小さい子は面白い表現力を発揮しているし、高校生ともなれば、それこそプロ級である。
私は「総評」というので短いスピーチをさせられたけれど、文句の付けようがないので、
昔、昔、自分が小さかったときの水田のギンヤンマ捕り、とくにとんぼ釣りの話をした。
こうなると私はまさに“土地の古老”である。
大切に保護してもらいたい。
※写真は10月5日に軽井沢のとある池でオオルリボシヤンマのトンボ釣りをしたときの様子
- 10月28日 ~ バッタの顔 ~
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山下浩平さんに挿絵を描いていただいて「ファーブル先生の昆虫教室」を連載している。
その「朝日小学生新聞」の編集部から、読者と一緒に採集会に行ってくれと依頼が来た。
「そんなこと言ったって、蝶はもう遅いしなあ」と言を左右にしているうちに、季節はますます長けて行く。
ついに十月になった。
「仕方がない、バッタ採りにしよう」と観念して、「場所は登戸」と宣言した。
実際に、バッタのたくさんいる広い草地なんか都内にはない。場所はあっても、あの草刈り機が活躍しすぎるのだ。
ところがそれから日曜日は雨続き。
「日曜じゃないとダメ?」と訊くと、「小学生だって平日は忙しいです」と担当は、退職老人の僕をバカにしたようなことを言った。
10月21日に決行。応募の小学生が、定員の十数倍いたので、抽選にしたらしい。
眠いのを無理して早起きし、現地につくと、奇蹟のような上天気。バッタがいたいた。
主な獲物は、トノサマバッタとショウリョウバッタ。
前者は仮面ライダー顔、後者はねずみ男顔、と科学的解説をする。
子供たちは日に焼けておでこがひりひりしたんじゃないかと思う。
- 10月14日 ~ 近況報告と決意表明 ~
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6月3日のファーブル会総会から3ヶ月、今日になってやっと、今年度の「会費お願い」の書類を袋詰めして、発送の準備が整った。
「今後このようなことのないようにいたします」と、遅延を謝ってもう何年目か。
でもほんとうに、これで最後にしなければ。
会員名簿のパソコンによる管理も、及ばずながら、小生が手伝うことにし、どなたから受け取って、どなたからは受け取っていない、
と把握することが出来るようになった。
「月に一遍、書類をつきあわせ・・・」と今は決心したところ。
とにかく、今までよりはマメに、印刷物なり何なりが届くようにしなければ、見放されてしまう、と肝に銘じた次第。
それはさておき、対談集『本と虫とは家の邪魔』が青土社から出ることになり、ゲラはもう小生の手を離れた。
その中の、阿川弘之先生、北杜夫さんとの鼎談をいま読んでいて涙がこぼれそうになった。
装釘は、増山雪斎の虫の絵からとってもらうことに。
『虫の文学誌』は現在準備中。虫と人間にまつわる話は、調べれば調べるほど面白いことがあり、どこで切るかが、思案のしどころ。
ルグロによる「ファーブル伝」の翻訳は、集英社のブログに、順次上げて行く。
今日は、子供たちを連れて登戸にバッタを採りに行く予定が、天候不順で延期になった。
おかげでずいぶん仕事がはかどった。 - 9月16日 ~ ぼくの昆虫記 ~
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9月15日、町田市民文学館で、舘野鴻(たての ひろし)さんと対談。
会場にはいっぱいのお客様。
舘野さんの絵本『しでむし』『ぎふちょう』『つちはんみょう』製作の苦心談、
これから描きたいもの、構想中の絵本の話を聞く。題材は昆虫である。
素晴らしいパワーポイントの画像と精密な絵を見ながらの話だからじつに分かりやすい。
僕の役割は、ときどき突っ込みを入れることぐらい。要するに、サクラである。
千代田線根津駅から、小田急線はつながっているので、一本、と言ってもいい。
しかし、延々一時間、長い行程である。
この日は土曜で、混むのとは逆方向だからいいけれど、満員電車で毎日通勤するのはたいへんだ。
日本の勤労者のエネルギーの大半は、仕事そのものよりこの、通勤と、職場での心労に費やされているのでは、と思った。
そう言えば、僕も、大学に通い、教授会に出席し、勉強したくない学生と対応するのが辛かった。もうすっかり忘れていた。
朝からずっと書きたいことを書いている今が、人生で一番楽な時なのかも。
これで本が売れたら――
「完璧なことなんてない(Rien n'est parfait.)」
と『星の王子様』の狐が言っている。
舘野さんの絵本の原画展は町田市民文学館にて、9月24日まで。
- 8月30日 ~ 図録解説(5) ファルキドンアグリアスとスミレコンゴウインコ ~
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前回、アグリアス(ミイロタテハ)の色は、赤、藍、黒だと述べたが、アグリアスにはいろいろな種がおり、変異に富む。
そして、ファルキドンアグリアスという種などは、深い藍色に、黄色のアクセントを付けたような彩りなのである。
では、鳥の方はどうかというと、こちらにもやはりそういう変異がある。
すなわち、コンゴウインコにも、珍種だが、スミレコンゴウインコという種がいて、それが、藍色に黄のアクセントなのである。
ここでも、自然というデザイナーは、自分の作品を、ちゃんと自分の趣味で造っている、という気がする。
(図録はファーブル昆虫館でも販売しています) - 8月28日 ~ 図録解説(4) アグリアス(ミイロタテハ)とコンゴウインコ ~
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南米でもっとも派手な蝶といえば、アグリアスであろう。
その仲間には赤、藍、黒の三色で、一目見たら忘れられないような種がいる。
そしてその同じ南米に赤、藍、黒の取り合わせの、大きなインコがいるのである。
なんだか、蝶と鳥とが同じデザイナーの作ったものという感じがする。
ところで、南米には、ウラモジタテハという、アグリアスよりずっと小型のタテハチョウの仲間がいる。
そしてこの蝶がまた、同じ彩りを持っているのだ。
しかも、アグリアスの裏がジャノメ模様なら、このウラモジタテハの仲間も同様の模様をしている。
アグリアスとウラモジタテハとの間に類縁関係はあまりみられない。大きさが違うし、生態なども違うようである。
日本の蝶で言えば、オオムラサキとイチモンジチョウくらい違う。それがなぜ、こんなに似た姿をしているのか。
まさに同じ風土が、同じデザインの鳥と蝶を作った、としか思えないのである。
(図録はファーブル昆虫館でも販売しています) - 8月26日 ~ 図録解説(3) フタオチョウとシマウマ ~
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アフリカの蝶で、いちばん採りたいものは、(ドウルーリーやザルモクシスのような、オオアゲハの仲間は別として、)フタオチョウ類である。
フタオチョウは東南アジアにもいろいろいるけれど、この立派なタテハチョウの仲間がもっとも繁栄しているのは、アフリカのようである。
フタオチョウの仲間の翅の裏を、よくみると、細かい縦縞がある。 それを虫眼鏡で拡大してみると、何と、シマウマの模様にそっくりなのだ。
そういえば、シマウマの、太い筆で描いたような縞模様も、他の世界にはみられない、アフリカ独特のデザインで、蝶と野生の馬とが同じ模様というのもおもしろい。
現地の人の盾のもようも、同じ趣味で描かれているようにみえてくる。
同じ土地に住んで、同じ土、同じ光のなかで暮らしていると、人も、獣も、昆虫も、同じ趣味趣向を持つようになるのでは、
と思いたくなる。
(図録はファーブル昆虫館でも販売しています) - 8月24日 ~ 図録解説(2) ゴライアスオオツノハナムグリとオカピ ~
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この巨大ハナムグリは、西アフリカに産する有名なものであるが、ヨーロッパの博物学者に知られたのは、18世紀のことである。
前胸に、太い筆で大胆に描いたような縞模様があり、鞘翅はチョコレート色である。
最初に得られたものは、コンゴ河を上流から流れて来た死骸であると言う。
それを船乗りが英国に持ち帰ったものがオークションにかけられ、当時の職人の年収ほどの、大変な値段で落札された。
オカピはコンゴ産の珍獣である。
ジョンストンという人が、現地人から革を入手し、学会に発表した。
最初は、シマウマの新種だと思われ、ジョンストンシマウマとされた。
この、同所産の甲虫と珍獣は、同じデザインで創られているように、私には思われてならない。不思議ではないか。
(図録はファーブル昆虫館でも販売しています) - 8月22日 ~ 図録解説(1) マッチョな虫 ~
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大昆虫展で販売中の図録『虫から始まる文明論』について何回かに分けてミニ解説をしていこうと思います。
まず最初は”マッチョな虫”について。
昆虫の体を細かく見ると、人間などと共通した形に見えることがあります。
たとえば、アフリカ南部に住むフンコロガシの一種などは、裏返すと、腕が太く、まるで力こぶが盛り上がっているようです。
人間にもボディービルダーのように、異様なほど筋肉を発達させているひとがいます。
昆虫は「外骨格」と言って、いわば、骨が体の外にあって、鎧を着ているようなものなので、
これ以上、いくらトレーニングをしても、さらにマッチョにはなれません。
(図録はファーブル昆虫館でも販売しています) - 8月19日 ~ セミの気持ち ~
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子供たちの標本教室が終って窓をあけると、さあーっとさわやかな風が入ってきた。
あんなに暑かったのに、もう秋の気配である。
そういえば、日が落ちるとコオロギがないている。
蝉の声にもツクツクボウシが混じってきた。
標本教室の子供たちは夏休みの宿題をするために参加したのではないだろうけど、
この時期に聞くツクツクボウシの声は”オーイ、シュクダイシタカ”と聞こえたものである。
夏休みはそろそろ終盤だが、残暑はまだまだ続く。
しかし、秋は確実に迫ってきているのである。
思わず、ラ・フォンテーヌの蝉の心境になる。
- 8月18日 ~ 宣伝文句 ~
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集英社のRENZABUROというサイトで、ファーブルの伝記を翻訳して挙げています。
伝記の著者は、ルグロという人で、本職はお医者さんで国会議員ですが、ファーブルを深く尊敬し、アルマスの研究所にも出入りして、弟子のように親しく付き合った人。
一番頼りになる伝記だと思います。RENZABUROはただで読めます。
それから、毎月、第3火曜日の11時過ぎから、NHKの「ラジオ深夜便」というのに出て、10分間ほど喋っています。
家の電話に、NHKから電話がかかってくるという生放送なので、雑音が入らないか、緊張します。
相手をしてくれるのは、三宅民夫さんというベテランアナウンサーです。
顔を突き合わせていないせいか、ツーカーという具合にはいかなくて、聞いている方ももどかしいかもしれません。
それでも何とか話を分かりやすくしようとしているつもり。
次回は21日火曜日の夜です。 - 8月8日 ~ ガタが来る ~
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また颱風が来る。
朝のニュースで、昆虫館のことが心配になる。
3階の非常口から雨漏りがする。
この前の逆走颱風の時は、床に置いた本が水を吸ってぷっくりふくれた。
だから昨日、犬用のオシメをその周りに敷き詰めて来たのだが・・・
酷暑でエアコンの電力消費量が増えたのだろう、頻繁にブレーカーが落ちるようになったので、電設会社に頼んでアンペア数を上げてもらった。
エレベーターの非常用バッテリーも交換しなければならないし、12年も経てば、昆虫館もあちこち傷む。
人間と同じでガタが来る。
颱風は来てほしくない。海の方へ逸れてくれますよう。
- 8月7日 ~ トークショーモドキ ~
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8月1日のことになってしまいましたが、スカイツリーの『大昆虫展』でカブトムシゆかりさんと、トークショーのようなことをやりました。
お客様は小学校低学年の虫好きキッズが中心でしたが、ゆかりちゃんのキッズ対応の上手なこと。
おじさんは、ただ突っ立っていてもいけないと思って、カブトムシの絵を描いて体の部分を説明したりしました。
その後ろに、生きたカブトとクワガタのいるケージがあるので、そこから子供たちの歓声が響いてきて、
後ろの席のひとはこちらの話が聞き取りにくかったかも。
せっかく作った図録はあまり売れていない。
と言って、これを読んでくれるような高学年の子たちは、塾や予備校の合宿で来てくれないし、ねえ。
いいこと書いてある図録なのになあ。
- 7月14日 ~ 開幕 ~
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昨日は『大昆虫展』のプレスリリースでスカイツリーへ。
哀川翔さんとカブトムシゆかりさんと三人、壇上でさらし者になったが結構楽しかった。
恒例の、中に入れるカブトムシのケージをはじめ、クワガタなどの生きた虫たちも多数。
標本もなるべくわかりやすく展示したつもり。
その標本と連動した図録もなんとか間に合った。
会期中はトークショウや昆虫教室や標本教室も開催される予定。
ぜひおいでください。
ところで、タイの洞窟に閉じ込められていた子たちが全員救出されたとのこと。
遠い異国のことながらほっとした。
- 7月1日 ~ 梅雨明け ~
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梅雨が明けた!カーッと照りつける真夏の太陽。例年より明けるのが一ト月も早いという。
お米は大丈夫でしょうか。
昨日、川崎市の生田へ夜間採集に行った仲間の話では、
あの辺りの環境がずいぶん乾燥している感じだったという。
おまけに名月。
夜間採集にいいのは、今にも降り出しそうな、むっと蒸す、月の出ない暗い夜である。
やはり虫は蒸シ、蒸シしたときに生じる、と『大言海』にも書いてある。
お後がよろしいようで。
PS 忘れておりました。
今年のスカイツリー「大昆虫展」のために図録を発行することになった。
それで小生の持論である、「虫から始まる文明論」をテーマに、
カラー全32ページの、奇麗で、面白くて、子供たちがびっくりするようなものを、と、ただ今準備中。
乞う、ご期待。
- 5月12日 ~ ファーブル伝 ~
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集英社のRENZABURO(レンザブロー)というサイトで、
5月11日からファーブルの伝記の翻訳がアップされています。
著者はファーブルの弟子のルグロという人で、
伝記としてもっとも有名なものです。
現時点では序文~まえがきと第一章までですが、
順次最終章までアップされていく予定です。
もちろんタダで読めます。
- 5月6日 ~ 昆虫展の予告 ~
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生きたスカラベ(フンコロガシ)が昆虫館に来た!
エジプト産のスカラベ・サクレのようである。
誰でも驚くのは、その動作の速さだ。
ポニーの糞、ヤギの糞を与えると、たちまちそれを球にして転がしていく。
ファーブルの「昆虫記」を読んでもこれほど動きが速いとは書いていないように思う。
これをスカイツリーの昆虫展に展示するつもり。
スカラベのリアルな生態を目の当たりにした人は少ないと思うので、きっと人気が出るだろうと思う。
運が良ければ翅を広げて飛び立つ瞬間も見られる。
横腹のところから翅をさっと出して、ハナムグリ式に、一瞬で飛ぶ。
- 4月7日 ~ 千駄木の近況 ~
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何だか知らないけれど、今また建築ブームのようで、千駄木五丁目界隈にもクレーンが林立している。
昆虫館の並びの宗教団体の前庭にも、「林ガレーヂ」という有料駐車場にも、斜め向かいの住宅跡にも、
クレーンが・・・と思う間もなくプレハブらしいモダンな建物が出来ていく。早い、早い。
それはいいのだけれど、土地が高価なせいか、敷地いっぱいにきっちり建物が建って、
植物の量は減るばかりである。
前の更地なぞは、一年あまりのあいだに草が伸び、キク科の帰化植物に花が咲き、
芙蓉のピンクの花までが見えてきて「いい具合」と思っていたら家が建った。
千駄木の”駄”は単位で、一頭の馬の背に載せられる量を”一駄”という。
千駄木は上野寛永寺の薪炭林であったことから、千頭の馬の背で運ぶほどの量の木があるというので、
かくは名付けられたというが、そのうちに「無駄木」にならないとも限らない。
- 3月11日 ~ 蛾眉蝉額 ~
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古代中国における、美人の形容の一例。
孔子様が編纂したと伝えられている、古代歌謡集『詩経』のなかに、若い美人がどんな風に形容されているか、というと、
額は、蝉の前胸のように秀で、眉は蛾の触角のよう。
うなじは脂ぎったカミキリムシの幼虫のように、白くふっくらとなめらかで・・・・とある。
どうやら、虫に対する偏見のようなものはないようで、まことにおおらかな感じがする。
ただし、二千数百年前の中国の話。
こういう話を、古今東西から集めて、『虫・文学事典』という本を出そうと、いま準備中。 - 3月4日 ~ 安心毛布 ~
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昆虫館に忘れ物が多い。
もちろん、来館者も多いのだが、暖かくなって、のんびりした気分が関係している様な気がする。
この間は、子供の「魔法のタオル」の忘れ物。
お母さんから連絡があって、すぐ取りにくるとの事だったが、
「なかなか仕事がおわらなくて・・・来週行きます」と、変更があった。
こっちはいつでもいいのだが、その間、大事な物がないお子さんは眠るとき、吸うものがなくて困ったのでは、と心配になる。
- 2月18日 ~ 差し入れ三昧 ~
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梅田さんが宮古島からオオゴマダラとアサギマダラを採って帰ってきた。
ファーブル館の吹き流しに入れてやると、元気にしている。
こういうのにいちいち餌をやるのは面倒だなぁ、と思ったが、吹き流しの上部に
ティッシュペーパーを敷いて砂糖水を撒いてやると、自分から寄ってきて吸い始めた。
これなら簡単、何匹でも飼える。
我々はその横で、ビールと日本酒で反省会。
今日はボランティアの島田さん(きのちゃんママ)からボルドーシュペリエール、シャトーもののマルジュロ(MARGEROTS)の差し入れがあった。
さすがに美味い。
こういうのは、こっそり他人の見ていないところで渡して欲しいとひそかに思った。
そういえば今日、本郷三丁目でレストランをされていたというご夫婦が、拙著の何かに”美味い沢庵には滅多に出会えない”と書いたのをお読みになって、わざわざ長野の沢庵を差し入れてくださった。 - 1月27日 ~ 月夜の蛾 ~
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日本蛾類学会の総会というのが、東大赤門そばの建物であった。
そこに呼ばれて、ヨタ話をした。
内藤丈草という、江戸時代の俳人がいる。松尾芭蕉の弟子である。その人の句に、
「大原や てふの出て舞う 朧月」
というのがある。
てふ(蝶)も朧月も春の季語である。
大原は京都。そして大原といえば、寂光院と連想がはたらく。
蝶は平家の御紋でもあり、大原は「平家物語」ゆかりの地でもある。
平安時代末期、壇ノ浦の戦いに敗れて入水するも幸か不幸か救い上げられた、平清盛の娘、建礼門院徳子がここで余生を送った。
平家物語には舅の後白河法皇が建礼門院を訪ねてきた様子が描かれている。
さて、春の夜にあらわれた、この”てふ”とは何か。
今でも「カイコのチョウ」などという人がいるけれど、彼の時代は蝶と蛾を明確に区別してはいなかったと思われる。
春霞がかかった朧月夜に飛び出したのは、もしやオオミズアオではなかったか。
ゆらゆらと幽玄な舞い方をする美しい蛾が、あたかも建礼門院の怨霊のように出てきた・・・
オオミズアオのことを英語では、”Moon Moth”と称するというのがこの話のオチ。
- 1月14日 ~ 外来新種 ~
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関西でもクビアカツヤカミキリが発生しているらしい。
大阪芸大で同僚だった北端信彦先生があちらで採れた標本を送って下さった。
実は小生、中学生くらいのときに標本写真を見て、憧れたカミキリムシなのである。
名前の通り頸のところが朱色で、触角の長い大型の虫である。
食樹はサクラ。ウメやモモも食うという。
これが東京近辺の川岸の、桜堤の老樹に大発生したら大変なことになるであろう。
※編集部註:クビアカツヤカミキリは2018年1月に特定外来生物指定されました