『完訳 ファーブル昆虫記 第10巻 下』 (集英社) 発刊

完訳ファーブル昆虫記 第10巻 下  2017年5月26日に最終巻となる二十分冊目が発刊されました!
 刊行開始から12年。博物学の不朽の名著、遂に個人完訳完結!
 80歳を超えたファーブルが、幼年時代や高等中学校(リセ)当時の思い出をつづる、
 全221章のなかでも指折りの感動的なエッセイも掲載。
  ※ファーブル昆虫館でもご購入できます(定価3,800円+税)
  ※サイン本もあります!(残りわずか)

館長の部屋(ブログ) 2017

10月26日 ~ 進歩と成果 ~
蜂類図説  先月、インセクトフェアで手に入れた新田信悟さんの『日本蜂類図説』を楽しんで見ている。
 こんなに親切な、分かりやすいハチの図鑑は初めてである。
 ギングチバチとかツチスガリとか、小型のハチでも、種の違いがよく分かる。
 ファーブルの『昆虫記』にも出てくるトガリアナバチが、今はオオハヤバチと呼ばれていることを初めて知った。
 このハチは飛び方が非常に速いためにこう名付けられたらしいが、いったい何のためにそんなに速く飛ぶのか、
 と訊きたくなる。
 きれいな標本を”ビシッ”と撮ってある、デジカメというものの進歩も凄いが、それをこんな風に活かして、
 こんな成果をあげる人たちも凄いと思う。

10月7日 ~ 虫喰う虫 ~
ヘレナキシタ  昆虫館の三階の本棚に展翅板が突っ込んである。
 標本教室で模範演技に作った標本が展翅されたままその上に乗っている。
 古いのは一年以上もそのままである。
 前々から気になっていた。
 オニヤンマ、カマキリモドキ、ランノハナカマキリ、ヘレナキシタアゲハ、キイトトンボ、マンディブラリスノコギリクワガタ・・・
 この最後のなどは、飼育品とはいえ、体長100ミリ近くある。
 で、思い切って展翅テープをはずし、標本箱に移してみた。
 案の定、カツオブシムシの飼育場の観を呈している部分もあった。
 ヘレナキシタ♀がいちばんひどくて、カツオブシムシも、たらふく食って巣立ち、無事社会人になったようである。
 この館の斜め向かいに空き地が出来て二年ばかり、キク科の帰化植物が咲いているから、カツオブシムシの親はそのあたりの花上にいるのではないだろうか。
9月23日 ~ 年に一度のウサバラシ ~
プレポナ  サンケイプラザで恒例のインセクトフェアが開催された。
 私ももう断捨離の歳なんだが、買う気満々で臨んだ。
 今年のスカイツリーの昆虫展が幸い好評で客入りがよかったので、来年の展示のために材料を買い入れる、という口実もある。
 日々是口実である。
 まず木曜社で、メキシコ産の思い切り高いプレポナを買ってしまい、歯止めが効かなくなる。
 あとは日本のハチ、直翅目を大人買いし・・・もう覚えていないぐらい買った。
 このために一年間ハタライタという気がする。
 あ、バトケラも買った。
9月21日 ~ 襟の色 ~
蟲の饗宴  35年も前に、平凡社の雑誌『太陽』に2年間連載した『蟲の饗宴』が本になった。
 昔の文章で、それこそ”若書き”だから、今、世に問うて大丈夫か、と思ったけれど、
 世界文化社の編集部で別に何とも言わないで出してくれたから、それはそれで大丈夫なのだろうと思う。
 挿絵は十九世紀のもので、現代の”ヘタウマ”などとは違って、基本がしっかりしているから、デザイン的にいじってもびくともしない。
 表紙に使われているのは、ドノヴァンの『インドの昆虫』の一頁で、虫はキエリアブラゼミである。
 大きな、美しいセミで、首に黄色の蛍光色があり、クスノキのような芳香がある。
 しかも、飛び立つと、同じ土地に産するアカエリトリバネアゲハそっくりの感じがする。
 アカエリトリバネも実は毒蝶で、これをたくさん展翅すると、鱗粉が眼に入って腫れるという。
8月23日 ~ 大昆虫展閉幕 ~
 スカイツリーの「大昆虫展」が終わった。幸い今年も好評のようだった。
 しかし、大量の標本箱や生きた虫を運び出して、ファーブル昆虫館まで持って帰るのが大変である。
 梅田さんの大きなワゴン車と安達さんの軽トラックにいっぱい詰めるのに何時間もかかった。
 今年は特に、「風土と虫と人の文明」のテーマなどを掲げたので、説明パネルを造るのに時間がかかった。
 来年はこれを図録にしようかと考えている。
 搬出のあと反省会でいっぱいやりたいが、梅田さんは車を置いていくわけにいかないので残念。
 残った皆で梅田さんに気兼ねをしながら軽くビール。
7月29日 ~ スカイツリーに行ってきます ~
鼎談  池田清彦、カブトムシゆかり、奥本のメンバーでトークショー。
 ところが今日は、あいにくと言うべきか、両国の花火の日である。
 夕刻6時から始まるトークのために、千駄木を何時に出ればよいか。
 何を話すかより定刻にたどり着くことがまず問題。

 ところで、近藤さんが山形に長期出張されて催促する人がいなかったので、ブログをサボッてしまった。
 締め切りがないと原稿は書けないもの。
7月1日 ~ 赤い贈り物 ~
buru  ああ、もう七月になった。まさに光陰矢の如し。
 近藤さんが山形に行ってきて土産に大粒の甘いサクランボを持って来てくれた。
 皆でいただく。紅秀峰という晩生の品種だそうだ。
 フランスのサクランボの鈴生りの様を想い出す。
 リンゴやサクランボはあっちの方が本場なのか。
 蝶も、フランスのものと、東北、北海道のものは分布が重なる。
 クジャクチョウやコヒオドシ、キアゲハはあっちの普通種だ。
 パリの大学の廊下の窓でコヒオドシがバタバタやっているのを見たし、
 モンパルナスの墓地のボードレールの墓のあたりでアタランタアカタテハを見たことがある。
 ところで、もう一種、赤いものが四国から届いた。
 トサヒラズゲンセイという、オスはまるで赤いクワガタのように見えるツチハンミョウの仲間である。
 去年、近藤さんと高知を訪れた際、牧野植物園でお会いした方がわざわざ送ってくれた。
 サクランボもゲンセイも真っ赤な採れたてである。
5月20日 ~ 無警察 ~
buru  恐ろしい光景。
 昆虫館のクヌギの緑の葉陰で、チーチー、チュウチュウ、小鳥が騒いでいる。
 青っぽいスリムな小鳥で、シジュウカラのようだ。そこにスズメなどが寄ってきた。
 その群れが、表通りから昆虫館の裏の民家の植木に移動した、と思ったら、
 真っ黒い、大きな鳥がワッサワッサと羽搏いて襲ってきた。カラスだ。
 そしてシジュウカラの巣立ったばかりのヒナらしい一羽をぱくっとくわえた。
 親がモビングするように攻撃するが、カラスは平気で、親鳥の目の前でヒナを脚で押さえ、羽をむしって食べはじめた。
 その間約五分。びっくりした。
 野生動物の世界は無警察状態である。
5月5日 ~ 標本修理 ~
buru  書斎の壁に昆虫標本を掛けて毎日眺めている。
 カーテンを開けたままにしておくと朝日が当たるので、梅田さんに頼んでUVカットの透明膜をガラス面に貼ってもらった。
 さて、中に何を入れるか。自分の特に好きな虫。
 でも紫外線で標本が褪色すると惜しいから、たくさんある虫にする。
 まあ、それほどたくさんあるわけでもないけれど、インドネシア、ブル島のブルキシタアゲハ。

koto  それと同様に真珠色に光るコウトウキシタアゲハ。
 それから、ヤンソニーテナガコガネ、とバランスを考えながら刺していって、ルリモンアゲハを刺したら、
 尾状突起が折れかけてひらひらした。
 そこで、修理に熱中する。
 髪の毛を取って木工用ボンドをつけて芯にする。
 それからまた少しずつボンドをつけて・・・と結構時間がかかる。
 しかし、楽しくないこともない。
4月30日 ~ シトロンの花咲く ~
lemon  「昆虫館」のレモンが今年はずいぶんたくさんの花をつけた。
 去年は五つ六つ、花が咲いたのだけれど、実はひとつしか生らなかった。
 そういえば一昨年は五つ六つの実が生ったのだった。
 このレモンは、夜店で買ったものだと思う。
 一年経って鉢のまま、枯れそうになっていたのを地面に下したら、元気になって生き返ったようである。
 人間もマンションなんかに住んで衰えているのが、地べたに建った家に住み替えたら、若返ったりして・・・そうはいかないか。
 もちろん、アゲハの食樹として植えたのだが、場所が悪いのか、蝶はあんまり来ない。
 それでも「シトロンの花咲くところ~♪」という昔の歌を思い出すよすがにはなる。
4月8日 ~ 完訳記念 ~
j h fabre  ファーブル『昆虫記』完訳版の第10巻下、つまり、二十分冊目がこの5月26日に出ることになっている。
 著者というものはだいたい出版の3か月前に縁を切られてしまうことになっているので、
 訳者の私も、校正刷そのほか、もうまったく手を離れてしまっていて、手も足も出せない。
 ところが、集英社インターナショナルから出ている「kotoba」という言論誌で、
 完訳記念号を出してくれるというので、解説めいたものを書いている。
 本編にはもう一切、手を加えられない中、寄稿を書きながら著書に思いをはせているところだが、
 ファーブルの生涯とその仕事を紹介しようとすると、その実績や功績の膨大さ・・・、あらためて感心する。
 ファーブル以前と以後とで、西欧人、日本人の昆虫に対するイメージはずいぶん違ったはずだが、
 そういうことについて論じたものはあまり見当たらないようである。
 この完訳を機に、大人の方がファーブルを読むようになってほしい、と私は思っている。
3月11日 ~ ヒエログリフ ~
聖刻文字  歳を取ったから、というわけでもないだろうけれど、一日中、本や書類を探している。
 「あれがない、これがない」と、探すものに限って今すぐ必要な、大事なものばかり。
 ほんとうに不思議である。
 そしてその大事な物件は、用が済んで要らなくなると、すぐ出てくる。
 それが紙ならまだしも、電子ファイルとなるとどういうことになるのだろう。
 このまま全世界で膨大な情報がコンピュータという電脳箱に保存されたままになるのであろう。
 アラジンのランプの精のように、情報が待機しているところを想像すると何となく気持ち悪い。
 と書き始めたのは、今、大澤はるかちゃんの書いてくれた、エジプトの象形文字の紙を探していて見つからないからである。
 小学二年生のはるかちゃんは、象形文字の教科書を見ながら、小生に手紙を書いてくれたのだった。
 その現物が、今、無い。
 でもそのうちに出てくるさ。

 とここまで書いた紙を近藤さんに渡して、机の上を整理していたら書類のピラミッドからくだんのお手紙が出てきた。
 それがこの写真です。
3月5日 ~ 啓蟄 ~
水仙  ちょっと前まで、北風が吹くとふるえあがっていたのに、南風がふーっと吹くと
 急に優しさに包まれたような気になる。
 風に暖かさがあるなんて忘れていた。毎年のことなのに。
 つくづく娑婆はいいなぁ、と思って散歩していると、方々の家の庭に花木が植えてあることに
 気が付く。
 ほんと暖かい。近所のコブシの白いツボミが見る見る伸びる。ハクモクレンも咲き始めた。
 湯島天神はさぞや大賑わいだろうが、境内の梅や沈丁花の香りは薄まりつつあるか。
お祝い会  昆虫館の植え込みの水仙たちもそろそろ花期を終えそうだ。

 三階のワークスペースでは「昆虫教室」。
 参加者の小学生たちはじっと虫の話に耳を傾け、自分がもってきた質問をしている。
 伊藤さんと小生は二階の標本保管庫で整理作業。
 夏にスカイツリーで開催する昆虫展の準備ということもある。
 ときに今日は啓蟄。春になると忙しい。
2月5日 ~ カブトムシの詩人 ~
カブちゃん一日館長  よく地方の駅などで、「一日駅長」の催しがある。
 なかには猫が駅長さんになっいるのもあって、こういうのは法律上はどういう扱いになっているのかなぁと思っていたら、
 今日、ファーブル昆虫館の館長さんはカブトムシだという。
 いや、虫ではない。カブトムシゆかりさん(以下 カブちゃん)が館長を勤めてくれるのである。
 ささやかな任命式典のあと、私も付き添ったがイベント参加者たちと館内を巡回。
 そのあと、カブちゃんが講師となって昆虫教室を開催。これが盛り上がったこと!
 カブちゃん先生が出す問題に小学生たちが「ハーイ」「ハーイ」と絶叫して、こっちは耳が痛いくらい。
 彼女はそういう子供の意見をうくまひろいあげ、公平に当てていく。
 ボクとのトークショウはほとんどアドリブだったが、さすがにテレビのバラエティ番組で鍛えられているのだろう、
 どんなフリでもテーマでもくるくると頭を回転させて見事にさばいていく。
 あとで廊下で会った子供たちからも面白かったと反応があった。
カブちゃん一日館長2  夜はイベントの慰労もかねてスタッフのみなさんと打ち上げに繰り出した。
 一週間遅れになったようだがささやかなお誕生日祝いもして、夜の部も盛り上がった。
 そして、宴たけなわのなか、カブトムシの詩人はテレビのロケ現場へとでかけていった。
 一日館長、おつかれさまでした。




1月22日 ~ 日本の未来は明るい ~
標本教室  今日は「甲虫標本教室」の開催日。
 数年前の標本(乾燥品)を蒸し器で蒸す。
 20分くらいで、関節が柔らかくなるので、左右対称に整えて針で止める。
 今日の受講生は9名。顔なじみの子もいる。
 なかなか器用で、講師の話をよく聞く。日本は大丈夫だ。
 生徒さんは最初に好きな虫を自分で選ぶのだが、
 それがスマトラの大きな青い筋のある(横縞の)カミキリだとか、アルキデスヒラタクワガタだとか、立派なものばかり。
 小さいときにこんな豪華種を練習台に使ってバチが当たらないかと、昔人間の私などは思うのである。
 「今日は何でここまで来たの?自転車?」
 「歩きです」
1月14日 ~ ヘラクレスの悩み ~
ヘラクレス  日本では、どこの家庭のヘラクレスも、(もちろん一般家庭にはそうそういないだろうけど)
 狭いプラスチックケースに入れられて、昆虫ゼリーを与えられて住んでいるはず。
 ところがそれをなめようとすると、ゼリーの容器は押されてケースの壁際にずれていく。
 すると今度は長い角がつかえて口が届かない。結局ゼリーが食べられないのである。
 角が立派なのも善し悪し。
 気の毒なので、中央においた木片にゼリーを画鋲で固定してやった。
 それでやっと彼は食事にありつき、見ているこちらも安心した。
 牙が伸びすぎたアフリカ象などにもこんなことがあったりして。
 キリンも池の水は飲みにくい。
 人間だって、牙や首が長すぎると、盃の酒もジョッキのビールも飲みにくいだろうと思う。
 手が器用でよかった。
ヘラクレス  ところで、年末にヴェトナムから帰って昆虫館に来てみると、冷蔵庫が新品になっていた。
 扉を開けると空っぽで、庫内がぴかぴか光っている。
 これならビールでも何でもたっぷり冷やせる。
 ところが冷凍室のほうには何やら冷凍食品がぎっしり詰まっているから、
 どうやら冷蔵庫を買い替えたわけではないらしい。
 訊いてみると、暮れの大掃除の際、近藤さんと高根さんが意地になって古い中味を取り出して捨て、
 空になった冷蔵庫の中を磨き上げてくれたのだ。
 その古い、古い中味とは、何年も前に消費期限が切れた瓶詰のジャムとかギョーザのたれとか、
 いつのものか不明の、さまざまな横文字のパッケージに包まれた海外旅行のお土産とか・・・
 積年の残滓が山となっていたのである。・・・

1月7日 ~ ヴェトナムのクリスマス ~
ホーチミン  12月24日、クリスマスにヴェトナムへ行きました。ホーチミン市、すなわち昔のサイゴン。
 1970年代のヴェトナム戦争のことなんかもうみんな忘れてしまったかもしれないけれど、
 その頃学生だった我々七十老人には、消すことのできない記憶である。
 今、市街を歩いているヴェトナム人たちも、田んぼに死体がゴロゴロし、迫撃砲の音がサイゴンの街中にドンと響いていた時代のことは忘れていないはず。
 その国に遊びに行った。
 ヴェトナムは食い物が旨い。ただし、言葉の発音がむずかしい。
 とあるレストランで、壁に、蔓性のランの花が描いてあった。
 その花にホウジャクが来ているところ。と、よく見ると、ハチドリのようでもある。
 もちろんハチドリは南米の鳥で、このあたりにはいない。
 しかし、画家はホウジャクとハチドリを混同しているのではないかと思いつつ、食事をしながらずっと見ていた。
蔓 space ハチドリ





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