館長の部屋

昆虫学事始め

2025.7.3

 毎日暑い日が続きます。皆さん、気をつけてください。
テレビを見ていると、本当に、暑さで死ぬ人がいる。昔は、30度を超えることはあまりなかったように思われるけれど、近年は、35度を超え、40度近いことさえある。
 この暑さの中で、私が何をしているかというと、『昆虫学事始め』という、ノンフィクションもどき、小説もどきを書いています。今初校に赤をいれているところ。
 医学の世界のことと、その歴史に関しては、あの『蘭学事始』(オランダの医学書、ターフェル・アナトミア翻訳の苦労話)が有名で、国語の教科書にも、一部がでているくらいだけれど、日本における、昆虫学発展の歴史については、あまり知られていないように思われる。
 もちろん、医学は、病人の痛い、苦しいを治さなければならないので、それこそ、待ったなし、の技術であり科学であるけれど、昆虫学も人間の「飢え」に直結した緊急の学問である。それが、「飢え」を癒す呪術か宗教のようなことから、だんだん「趣味」を楽しむことになり、科学になってきた。
 ところが明治以来の、日本における近代昆虫学発展の歴史物語に関しては、あまり書かれていないようである。
サバクトビバッタや、ウンカ退治に、人間がどれだけ苦労したか、というのは、古すぎるように見えるけれど、いろいろな資料を漁っていると、そこに、たくさんの個性的な人物がかかわり、興味深い物語が埋もれていることがわかってくる。
 日本の昆虫学では、台湾との関わりが面白い。あの、フトオアゲハ発見の物語や、台湾のクワガタの豊富さの話だけでも、胸が踊る。
 それに知っている人は知っているけれど、あまり書かれなかったことは、やがて年月と共に忘れられる。
そんなことを掘り起こしてみると、不要不急のことばかりではないーー
と思って、この暑い中で、校正刷りに手を入れているところです。

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